株式会社KYOSOテクノロジ
「経営は人なり」を理念に世界基準のものづくりを支える
2022/12/01
機械、電子回路・プリント基板、組込ソフトウェアの3分野における設計技術と、それらの融合によるメカトロ(ニクス)機器の開発を手がける、株式会社KYOSOテクノロジ。
近年では、サービスロボット領域や、IoTデバイスの設計開発、さらに、最先端のAI技術を用いて最適な製品設計を生み出す「ジェネレーティブデザイン」設計にも挑戦し、大手企業の開発パートナーとして、世界基準のものづくりに貢献しています。
創業者を父に持つ現代表取締役社長・岡田恭子さんは、27歳のときに会社に入社。以来、組織としての基盤固めに注力し、成長を支えてきました。社員や事業への想いをお話しいただきます。
3つの強みで価値を創造する
弊社は、1973年設立の株式会社京装コンピューター(現株式会社KYOSO)から、2003年に分社化して生まれた会社です。京装コンピューターは、ITの黎明期であった当時から、独立系総合情報処理サービス業として、大型計算機のシステム開発・運用・保守を受注していました。次第にCAD関連サービスを提供するようになり、機械、電気電子回路、プリント基板の設計業務に事業を拡大。それらの事業の専門会社として、弊社(株式会社KYOSOテクノロジ)が設立されたのです。
弊社の強みは、大きく分けて3つあります。
1つ目は、製品を生み出すのに必要な「機械」「電子回路」「組込ソフトウェア」の3つの設計を、すべて自社でまかなえる点です。三位一体で提供できる会社はめずらしく、発注する側にとっては、3つを別々に発注するよりもマネジメントや打ち合わせの工数が必要最低限で済みますし、弊社としてもそれぞれの知見を踏まえた広い視野から提案ができる。これは高く評価いただいている点だと感じています。
2つめの強みは、京都試作ネットをはじめ、社外とのネットワークがあることです。昔は、「こういう機械のここの部分の設計をお願いします」といった部分的な発注、業務委託的な発注が多かったのですが、現在はものづくりの多様化とともに、企画から提案していくことで新たな付加価値を創造する提案型営業にシフトしています。また、製造業ではないお客さまからも「こんなものがつくりたいんだけど、一緒に企画から入っていただけませんか?」という上流工程からのご依頼が増えているんですね。
そうしたご依頼は検討すべき範囲が広いため、たとえば金属加工の知識であったり、素材の知識といった、社内にはない知見を得られることで、提案の可能性をぐんと広げることができます。
3つめは、最先端の技術を積極的に取り入れている点です。サービスロボット領域や、IoTデバイスの設計開発のほか、AI技術をものづくりの設計に活かすジェネレーティブデザインにもいち早く挑戦。新しいことを常に追い求める姿勢は、弊社の大きな強みだと思います。
父親からの突然の入社宣告、そして他界
経営者を親に持つ人の中には、小さいころから継ぐように言われながら育った方もいらっしゃるかと思います。しかし私の場合は「継ぐ/継がない」という話は一切なく育ちました。
KYOSOに入社するきっかけは、大学を卒業し、銀行に就職して5年ほど経った2006年秋のこと。急に父から「来年の春から来てね」と言われたのです。「相談」とかではなく、もう「決定」という感じで。
少しびっくりしましたが、「親が社長という人のほうが世の中には少ないわけだから、銀行で支店長を目指すよりもおもしろい人生になるんじゃないかな」と、わりとすんなり入社を決めました。たぶん楽天的な性格なんですよね。迷わない。
父は、私が入社して1年半後に急逝します。突然の出来事だったので、私が呼ばれたことと父の死は、おそらく関係ありません。ただ、思い返せば、入社宣告を受ける少し前に、父と社会情勢について議論を交わしたことがありました。普段は一切そんな話をしないのに、たまたま深い議論になり、そのときの私の意見が、どうも父の中での基準をクリアしていたようなのですね。その直後に呼ばれたので、何らかの期待はあったのでしょう。
おそらく、父自身、歳もとってきて、外からの新鮮な視点で会社の良いところ・悪いところを見つけ、改善していってほしかったのではないかと思います。社内の若い人たちは父に対して遠慮しがち。私なら臆することなく言えるので、そういう役割を期待していたのではないかと思っています。
働く環境の整備に力を注ぐ
入社して最初に着手したのは、規定類の整備です。創業期にありがちだとは思いますが、父は事業拡大には長けていた一方、組織体制の構築に関してはきちんと手が回っていませんでした。就業規則はあるけれどさまざまなケースに対応できるものになっていなかったり、人事評価も明確な基準がなく主観で評価されているような状態だったのですね。
2013年、京装コンピューターの設立から40年目の節目の年に代表取締役社長に就任しますが、就任後も注力してきたのは、社員の働く環境と生産性の改善です。
人事評価については、社内等級制度をスタート。評価の透明化を図り、社員のステップアップの指標を明確化。トライしたことがしっかりと評価に結び付く仕組みを整えることで、やりがいを感じられるようにしました。
また、事業のあるべき姿を考えたとき、業務委託的な仕事から、お客さまのニーズを読み取りソリューションを提案・発信できる仕事にシフトする必要性を感じていたため、「お客様にプラスを生み出す存在となる」ことができる人間力アップの研修を整備してきました。
加えて、KYOSOはIT系の会社であるのに、自社業務のIT化に関しても遅れをとっていました。それこそ「紺屋の白袴」※状態で、銀行やお客さま先ではとっくに電子化されていた給与明細を、私の入社時点では複写式の紙で出していたり。「自社でできていないとお客さま先で話ができないよね」ということで、一気に電子化の方向へ、今でいうDXへと舵を切っていったのです。※紺屋の白袴:紺屋が、自分の袴は染めないで、いつも白袴をはいていること。 他人のことに忙しくて、自分自身のことには手が回らないことのたとえ。
みんなで事業を回していく
弊社に長くいる社員からは、よく、私の入社以降「法治国家になった」と言われます(笑)。就業規則や評価制度など、働くしくみやルールを整えていったからでしょうね。
父の代では、父が采配を振っていたし、社員もベンチャーらしく自律的な社員が多かったので、整備されていなくても日々のオペレーションが回っていたのだと思います。ですが、私の代になってからはやっと「普通の会社」になったんですよ。規定もあるし、人事制度もあるし、がんばったら評価されるし、という(笑)。
私は、父のように「俺についてこい」というタイプの経営者ではないんです。そうではなく、みんなでひとつの目標に向かい、一緒にやる気を出してもらえるようにしていきたい。「一緒にやろうよ」と声をかけて、「うん、やろうやろう」と言ってもらって、みんなで事業を回していくということをやっていきたいと思っているんですね。
そういえば、ひとつ、父親から言われたことで、心に遺っている言葉があります。それは、「経営者は自分より優秀な人を部下に持て」ということです。
父は、「会社の中で自分が一番優秀だと、自分の限界が会社の限界になる。自分よりも優秀な人を部下に持てば、自分の実力以上に会社が大きくなる」と言っていました。
それは本当にそうだと思います。実際、弊社の社員は優秀。そもそも私より業界経験も年齢も上の人たちばかりで、尊敬できる点がいっぱいあるんです。もちろん、年齢的には人生の後輩になる社員も増えてきましたが、人間には必ず凸凹があって、できることもあればできないこともある。社員一人ひとりに「すごいな」と思える部分が必ずあります。私はたしかに社長という立場ですが、立場が上なだけであって、人間に上下はないと思っているんです。
ですから、社員がそれぞれの良さを発揮しながら、うちの会社を好きで働いてくれてほしいし、気持ちよく働いている社員を見るのが、私の一番のやりがいなのです。
コロナのときに感じた、うちの会社らしさ
どうやったら社員がやりがいを感じられる会社になるかを考え、いいと思うものはどんどん導入していく。もちろん、財務的な制限はあるけれども、「できるものはやっていこう」とできているのは、「いいですね、やりましょう」と言ってくれる役員や社員の存在が大きいと思っています。
たとえば2022年1月のこと。新型コロナウイルス感染症第6波の最中で、私自身、子どもがコロナに罹患して濃厚接触者になり家から一歩も出られなくなったんですね。そこで、役員会で、「社員がそういう状態になった際には、会社から日常生活に必要な支援物資を送ったらどうかな?」と提案してみたら、全員が「いいですね、やりましょう」と言ってくれたのです。それ以来、社員がコロナに罹患したり濃厚接触者になったりすると、即、物資を送り届けています。
会社全体が「いいと思ったことはやってみよう」という風土。私の力ではなくて、優秀で前向きな社員に支えられているのです。
時代に合った組織づくりで「いい会社」を目指す
近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれています。弊社は、工場や製造機械を持っているわけではなく、社員の設計技術を提供している、いわばサービス業の会社なので、社員の労働時間が売上に直結しています。そうした営業の数字はすべてスマホひとつで申請され、日々把握できています。DXの最初のステップであるデジタイゼーション(デジタル化)は終わっていると思います。
しかし、そうした数字を使っての業務改革や、将来を予測して社員の負荷軽減につなげるといったことはまだできておらず、今後やりたいなと思っているところです。
また、DXにより生産性は改善され、コロナが流行すればすぐにリモート勤務に切り替えるなど、フレキシブルな働き方ができるようになりました。その一方、リモートの弊害も感じています。
ベテラン社員はリモートの恩恵を受けても、若年層は仕事の進め方に迷いがち。また、人と話すことが好きな社員にとっても、リモート勤務は働きづらさがあるようです。従来型の働き方との融合をどう進めていくかが、新たな課題になっているのですね。これについては親会社のKYOSOで先行実施している様々な制度をこれからKYOSOテクノロジにも順次導入していきたいと考えています。
2023年はKYOSOグループができて50年の節目の年。これからも時代に合った組織をつくっていきながら、お客さまにも社員にも「いい会社だ」と思ってもらえる会社にすることが、私の目標だし、使命だと思っています。
(最終取材日:2022年10月14日 / 写真提供:株式会社KYOSOテクノロジ / 取材・文:編集事務所coillte立藤慶子)
紹介動画
企業概要
社名 | 株式会社KYOSOテクノロジ |
所在地 | 〒604-8151 京都市中京区蛸薬師烏丸西入橋弁慶町227 第12長谷ビル2F |
事業内容 | 機械、電気電子回路、プリント基板、組み込みソフトウェアの設計開発、試作および、評価 |
設立 | 2003(平成15)年12月1日 (株式会社KYOSOより分社設立、創業1973年) |
ホームページ | https://www.kyoso-tec.co.jp/ |